10/15 ピピ島ツアー
<クラブ・アンダマン・ビーチ・リゾート>
 この朝、自分が目覚めたのはまだ早朝と言ってもおかしくない5時半。当然、辺りは暗闇に包まれている。他の日ならば、もう一度ベッドに入ってしまうところだが、この日はベッドから起き上がり、体全体を目覚めさせるように努めた。と言うのも、この日はピピ島ツアー(Phi Phi Island Tour)を予定していた為、7時半には全ての準備を整えてフロントロビーへと行かなければならなかった。また長時間、どんな揺れかも想像出来ないジェットボートに乗ることになるので朝から体調を万全にしておきたいとも思っていた。
 それから1時間を経て、他の家族たちを起こす。奥さんも母親も船酔いを恐れてか、朝食はパスすると言う。乗り物酔いの激しい長女も、まだ寝ぼけている長男も朝食は取らないと言うので、結局自分一人で寂しくレストランへと向かう。

 ほぼ開店と同時刻にレストランへと向かった自分だが、それでもポツポツと早い朝食をしている人たちを見かける。料理のメニューは牛肉、豚肉、鶏肉、魚などを中心にほぼ1/3が昨日とは入れ替わっている。いくらバッフェ形式の朝食だと言っても、毎日同じメニューでは流石に飽きてしまう。また日本人にとっては、米食というのは欠かせない。そんなことも非常に配慮されているが、このホテルの特徴と言えるかも知れない。

 今日のツアーの出航は、プーケット港からなので、ホテルまでツアー会社のバンが送迎をしてくれることになっている。予約確認書には、7時半ピックアップと記載されている。
 その時間の10分ほど前には部屋を出て、ロビーへと向かう。同じ様な時間に、ツアーに出掛ける宿泊客も多いようで、ピックアップのバンを待っている。バンは次から次へとエントランスの車寄せへとやって来るが、自分たちの待つピピ島ツアーのバンはやって来ない。既に時刻は、予定時刻を過ぎている。
 自分の中で嫌な予感がよぎる。時間にはルーズなアジアの人たちだが、それよりも怖かったのは予約がちゃんと入っていないのでは無いかと言うことだった。予約が入っていなければ、いくらフロントで待っていてもピックアップにはやって来ないのだから。
 流石にしびれを切らし、ツアー会社に電話をしようとしたところ、フロントの前を日本人スタッフのヒロコさんが通りかかったので、声を掛けてピックアップが来ないことを伝えると、
『えっ?ピピ島ですよね。この時間にピックアップが来ないのは、マズイですねぇ。』と。予約確認書を見せて問い合わせをして貰おうかと思っていた最中、1台のバンが車寄せにやってきた。ヒロコさんは、そのバンから降りてきたドライバーに駆け寄り、予約確認書を見せて目的のツアーのバンであることを確認すると、自分たちを手招きし、
『良かったですね、バンが来て。』と言ってくれた。


<プーケット港>
 バンはニッサンのキャラバンで、既に欧米人が一杯乗っていた。自分たちが乗る席があるのか不安だったが、先客たちが気を遣ってくれて席を空けてくれた。ドライバーは、遅れてきたことには何も触れずに、自分たちを乗車させるとすぐに車を走らせる。
 シミラン諸島(Similan Lslands)に向かうツアーであれば、クラブ・アンダマンからも近い、パトンビーチの南端からボートが出航しているが、ピピ島ツアーの場合は、パトンとはほぼ対岸に位置するパンワ(Panwa)のプーケット港からの出航。場所的にはプーケットタウンを6キロほど南下したした場所。
 クラブ・アンダマンを出たバンは、プーケット港までノンストップで走り続けるが、その道のりは山道を通ることもあり、車酔いをしやすい人は早めに薬などを飲んでおいた方がいいだろう。自分たちも、この後ボートに乗船することを考えて、早めに酔い止めを飲んでいた。にも関わらず、乗り物酔いしやすい長女だけは駄目だった。満席のバンの中での出来事に、自分は非常に苦労した。

 やっとの思いで、バンが港へと入った。このプーケット港は漁港と言ったイメージの強い所で、非常に殺風景。停泊している船が日本では見ることが無い独特な形なのが珍しく映る。
 その港を更に奥に進んでゆくと、カフェかレストランのような造りの場所に辿り着く。道もいつの間にか、砂利道になっていたが、道自体がここで行き止まり。ここがピピ島ツアー出発のゲストハウス。
 既にゲストハウスのテーブルは出発を待つツアー客で一杯。自分たちのバンの到着がが一番最後だったようで、ここでも見かけるのは欧米人ばかり。日本人は女性6人組と自分たち家族のみだった。
 このゲストハウスの前の運河には、スピードボートと呼ばれる、自分たちが日本でも良く見かけるモーターボートを巨大化したタイプの船が2隻係留されている。このどちらかに自分たちは乗船して、ピピ島ツアーに向かうことになる。



<ピピ・レ島>
 ゲストハウスに到着して、5分もしないうちに一部の人たちが乗船が始める。やっぱり、テーブルに座っていた人たちは、遅れて到着した自分たちのバンを待たされていたに違いない。
 自分たちは訳も判らずにのんびりと腰掛けていると、スタッフの1人から、
『あなたたちも、あのボートに乗って。』と急かされる。言われるがまま、子供の手を引き、ボートへと乗船する。
 スピードボートは、船首側に逆V字を描くようにベンチシートとなっていて、船体真ん中付近に操縦席、トイレなどがある。また船尾側にも側面をコの字型のベンチシートとなっている。自分たちは船首側に座ろうとしたが、このツアーに添乗するスタッフが、
『船首は激しく揺れて危険だから、小さな子供が居るから後ろのシートに座ってください。』と言われた。その船尾側のシートだが、先に乗り込んでいた人たちで殆ど埋まっていたのだが、子供を連れているのを見て多少席を詰めたり、荷物を足元を置くなどして座れるスペースを空けてくれた。と言うか、そのお陰で自分たちの座るスペースはとても広くなってしまい、こういうところに関しては、本当に欧米人は日本人の若い人たちに比べて親切である。

 このピピ島ツアーは、幾つものコースが設定されている。ピピ島と言っても、6つの島から成り立っている諸島群。そのツアーの中で最も安価なのは比較的大きな船でゆっくりとピピ・ドーン島(Koh Phi Phi Don)を目指すツアーだ。今回ピピ・ドーン島に加え、ピピ・レ島(Koh Phi Phi Le)カイ島(Koh Kai)を巡るツアーに参加し、通常で大人B2800(自分たちはディスカウントして貰ってB2000)。ツアー代金には昼食も含まれている。水中メガネとライフジャケットは無料貸し出ししてくれるが、フィンなどの道具は別途となっており、ゲストハウスでB200で貸し出しされている。ボートに乗船してしまうと、もう借りることは出来無いので必ず乗船前に借りるようにしたい。また自分たちの参加したP.P. Island Tourの添乗スタッフは英語を喋ることが出来るが日本語は通じない。それでも非常に判りやすい英語などで、ある程度会話は通じるだろう。

 プーケット港を出航したジェットボートは、物凄いスピードでアンダマン海を航行する。その激しさは立っていることは出来無い程で、波の立っている場所をジャンプしながら最初の目的地であるピピ・レ島を目指す。心配していた船酔いだが、想像以上のボートの揺れにかえって緊張して、誰も酔うことはなかった。心配していた長女だが、こちらも全く平気なようで持参してきたお菓子と、船内で配られたミネラルウォーターで飲み食いをしていた程。乗り物酔いというのは、気分的な要素も大きいのだろうか。
 船尾に取り付けられている3機ものヤンマー製エンジンをフル稼働して、約45分後にはピピ・レ島でも非常に美しい海が見れるマヤ湾(Maya Bay)へ入り江へと近付いてくる。

 マヤ湾と言えば、やはりレオナルド・ディカプリオ主演のザ・ビーチと言う映画が欠かせない。映画自体は賛否両論別れるところだが、この映画に登場したビーチに関しては誰もが綺麗で、一度は訪れてみたいと思った筈。それがここマヤ湾である。
 断崖絶壁の山々に囲まれるように、そしてそのビーチはそれらに隠されているかのようにして存在している。海水はまさにアクアブルー。木々に覆われた島だが、砂浜は白一色で非常に目立っている。まさに映画撮影をするには最適な場所と言えるだろう。
 スピードボートは、このマヤ湾の中で停泊をした。ツアー参加者たちはまともに立つことが出来る状態となった(それでも波が立っていたので、船は揺れていた)ので、一斉にビデオやカメラでの撮影を始める。停泊はしたものの、残念ながらマヤ湾からピピ・レ島の上陸、またはシュノーケーリングをする事は出来無かった。ツアーのパンフレットを見ると、ここでのスイミングと書いてあったので、ちょっと残念だった。

 再びスピードボートは入り江を出て、5分ほど速度を上げてピピ・レ島を左手に見えるように進む。そして到着したのはロー・サマ湾(Loh Samah Bay)。この湾も海水は透き通っていて、とても綺麗だ。
 ここロー・サマ湾でボートは停泊すると、ツアー客に色々と世話をしてくれているちょっとばかり糸井重里に似たタイ人添乗員が
『では皆さん、ここではシュノーケリングを楽しんでください。』と言って、水中メガネとライフジャケットを配り始めた。ツアー参加者は、次々とそれらを受け取ると船尾から海に入って行く。自分と母親も、海に入る準備をするが、奥さんと子供たちはボートで留守番。

 船尾の混雑が解消した頃を見計らって自分たちもシュノケーリングを楽しむ為に海へと入る。海水は熱帯のアジアの海だけあって、やはり生暖かい感じ。この日の天気予報は曇りのち雷雨と言う予想だったが、幸運にも外れてくれて1日を通して青空も見える良い天気だった。そんな天気だったので、余計に海は透き通って見ることが出来る。
 ここロー・サマ湾は、マヤ湾よりも波が穏やかなので、潮の流れもそれ程きつくは無い。なのでシュノーケリングをしていても不安を感じることはないだろう。またタイ人添乗員が、船尾に立ってシュノーケリングの様子を常に監視しているので安心出来る。

 透明度が非常に高い海水に潜ってみると、まるで養殖でもしているのかと思ってしまう程、色鮮やかな魚たちが泳ぎ回っている。ボートからはクルーや添乗員たちが持ってきたパンの切れ端を海へと投げ込んでいて、その瞬間に可愛いを通り越してちょっと怖い位に魚たちが集まってくる。観光客たちが毎日のように訪れるロー・サマ湾の魚たちは、すっかり人間に慣れてしまっていて、付近でシュノーケリングをしていても全く逃げる様子も見せない。
 約30分間のシュノーケリング時間を終えると、ツアー参加者たちは次々とボートへと戻ってくる。海水で濡れた体も、船尾に設置されているシャワー(水圧は弱い)で洗い流すことが出来る。また添乗員から、よく冷えたパイナップルが配られるのだが、塩辛い海水の中にいたので熟れているパイナップルの甘みが更に増す感じだ。

 ロー・サマ湾を出発したスピードボートが次に向かったのは、ピ・レ・コーブ(Pi Leh Cove)
 ピピ・レ島の中でももっと入り組んだ湾となっている場所で、ここもボートが進んで行くと回りは断崖絶壁で囲まれる。凪の殆ど無い静かなロー・サマ湾は非常に浅瀬。海底の白い砂が透き通って見える程綺麗な海は、このツアーに参加して良かったと思う至福の時である。時刻は10時半を過ぎ、太陽が真上から照りつけていて、本当に綺麗だった。
 殆ど他のボートもおらず、カヌーを楽しんでいる人たちの姿が見えるだけ。大人なら足もつきそうな浅瀬なので、子供でもライフジャケットを身に付いていれば水遊びをすることが出来そう。しかし、ここではボートは停泊することは無く、非常にゆっくりとした速度でピ・レ湾の景色を楽しむだけだった。

 スピードボートが次に向かったのは、ピピ・レ島最後の目的地となるバイキング・ケイブ(Viking Cave)。この洞窟に近付くにつれ次第に鼻につく臭いが気になってくる。その臭いとは、ズバリ鳥の排泄物の臭い。
 ここバイキング・ケイブは、海燕が数多く生息しており、中華料理では欠かせない海燕の巣もたくさんあるそうだ。また名前の由来にもなっているバイキングというのは、かなり古い時代に描かれたというバイキング船の絵画が由来だという。また昔は、この洞窟に海賊たちが出入りをしていたからと言う話もある。
 現在は桟橋が壊れていて、ボートをバイキング・ケイブに着岸させることが出来無い。ここも船内から眺めるだけだったが、あの臭いの中を見て回るのもちょっと辛いので、丁度良かった。


<ピピ・ドーン島>
 ピピ・レ島を離れて、ピピ諸島最大の島で観光向けの開発もされているピピ・ドーン島に。
 ここで最初に訪れたのは、モンキー・ビーチ(Monkey Beach)。野生の猿たちが戯れているビーチで、ボートがビーチに停泊すると何処からともなく、猿たちが集まってくる。
 添乗員がツアー参加者たちを船首の方へ手招きするのでそれについて行くと、船首からクルーがバナナをビーチに向かって放り投げている。それに誘われるようにして、森の中から次々と猿が現れる。本当に猿が居るだけのビーチで特にビーチへ降りる事も無く、ここを後にする。

 そしてスピードボートは多くのボートが係留されていて、ビーチも比較的開発されているトン・サイ湾(Ton Sai Bay)へと到着する。他のボートと同じように船尾側をビーチ向けて係留をし、ツアー参加者たちを1人ずつビーチへと下ろす。停泊した場所は、ピピ・ドーン島でも最も賑やかな場所から外れた場所で、埠頭よりも更に西側に位置しているこじんまりと場所。
 『今からカヌーなどを楽しんで貰います。』と言う添乗員に続いて、Chong Khao Banglowの敷地を抜けるように椰子の木の茂る中を進む。荷物を全て持っての移動だった上に、子供たちがなかなか歩いてくれないので見事に自分たちはビリに。それでもジェットボートの操舵をしていたクルーは、そんな置き去りになりそうになっていた自分たちを見捨てずに目的地まで連れて行ってくれた。たった100m程の距離だったけど。
 カヌーをする為に訪れたのは、トン・サイ湾の対岸に位置する場所であるロー・ダラム湾(Loh Dalum Bay)。この島の最もくびれた場所に位置している為、対岸までは100m余り。
 ロー・ダラム湾では、ポツンとビーチ前に店を構えているJungle Baと言う店の前で自由時間となる。このビーチも非常に穏やかで凪は殆ど無い状態だったので、カヌーをするには絶好のポイントと言えるだろう。ツアー参加者たちは、無料で利用出来るプラスチック製の2人乗りのカヌーに競うようにして乗り込んで、湾内へ出掛けていった。自分もこの時、そばに居た糸井重里似の添乗員に
『あなたたちもカヌーに乗りませんか?』と聞かれたが、
『小さい子供が居るんで。』と話をすると、妙に納得していた。この添乗員は終始笑顔で、ツアー参加者たちに気配りはするし、配慮も行き届いていて、自分的には非常に好感が持てた。
 そんな訳で、ここロー・ダラム湾での自由時間、約30分はずっと子供たちと波打ち際で遊んでいるだけで終わった。他のツアー参加者たちがカヌーを気持ち良さそうに漕いでいるのを羨ましく思いながら。

自由時間が終了すると、添乗員から
『今からランチタイムになります。』と言う言葉の後に、ツアー一行はトン・サイ湾へと戻る。やっぱりここでも、自分たち家族は大荷物と歩くスピードが大人とは違う子供たちを連れている為に、団体から遅れながら椰子の木の間の狭い道を歩いて行く。
 昼食に訪れたのは、スピードボートが停泊している場所にほど近いホテルのレストラン。レストランと言っても、プラスチック製のチープなテーブルと椅子がずらりと並んでいるだけで、レストランと言うよりは食堂に近い感じの場所である。
 自分たちがこのレストランに到着した頃には、ツアー参加者の殆どがグループ毎にテーブルに着いていて、たまたま1テーブルが丸々だけ空いていたのでラッキーと思いながらそこに座る。すると自分たちよりも更に遅れて、欧米人のカップルがやって来て、添乗員がここにどうぞと自分たちテーブルに。相席するのはいいのだが、本来人数に含まれていない子供2人が椅子を占有しているので、座る席数が足らずに急遽他の予約のテーブルから持ってくる事に。また大騒ぎをしながら食事をする子供たちを前に、このカップルも食事がちゃんと喉を通ったかどうか。実に気の毒な事をした。
 食事の方は期待していなかったが、まあ自分の予想通りのレベルの内容だった。過去にパタヤから付近のラン島へ出掛けた事があるが、その時の食事に比べれば数段レベル高くて衛生的。メインの料理には何の印象も残っていなかったが、給仕をしてくれていた女性が皆イスラム教徒だった事と、食べた食事の中で一口サイズのお餅が美味しかった。ちなみに母親が、このお餅を子供たちの為に何度もおかわりに行っていたら、給仕の人から
『もう駄目です。』と言われた。何でだろうとそのお餅の置いてあるテーブルの方を見てみると、自分たちのグループの食事では無く、他の予約のツアー用の為に用意されていた物らしい。そんな事も知らずに、10個余りお餅を食べてしまってすいませんでした。

トン・サイ湾での昼食の写真はこちら

 昼食を済ませた人から順番にレストランを後にし、スピードボート出航の12時45分までの時間がロー・ダラム湾での自由時間となる。自分たちはレストランの目の前のビーチへと行き、丁度木陰となる場所を奥さんが陣取り、自分と母親が子供たちを遊ばせる。
 このビーチは砂浜は殆ど無いが、珊瑚礁がベースとなっていると思われ真っ白。砂も細かいので、素足で歩いていても痛くないし、怪我をする事も無い。波も非常に穏やかで、海水は開発の進んでいるビーチとは思えない程綺麗なのが特徴。但し、ボートが数多く停泊する場所になっているので、ビーチで水遊び出来る場所にはロープが張られている。
 昼食の前に訪れたロー・ダラム湾が湖の様なイメージなのに対して、こちらのビーチは本当に波のない穏やかな海と言うイメージ。それぞれのビーチのイメージが違っていて、非常に印象的。
 自分たちは競泳などで使う水中メガネを日本から持参していたので、ここでも海中へと潜る事が出来たが、殆ど魚は見当たらない。ロープの張ってある範囲に関しては、海底もずっと白い砂があるだけなので、素潜りには向かない場所かも知れない。またロープの張ってある沖側は、身長が180cmある自分でも足の届かないので、幾ら波が穏やかでも子供たちが一緒の場合は目を離してはいけない。

 自分たち家族の遊んでいる付近には、一緒のツアーに参加している人たちが沢山居たので、出発時間に遅れることも無かったし、似たようなボートばかり並んでいるトン・サイ湾で、乗船してきたスピードボートを見失う事も無く済んだ。
 出発の時間が近付くと、付近にいた同じツアー0参加者たちが少しずつスピードボートに向かって移動を開始。それに遅れじと自分たちも荷物をまとめてその後に着いて行き、添乗員やクルーの待つボートへと再び乗船をする。


<ヒン・クラング>
 比較的早い段階でボートへと戻った自分たちだが、ここトン・サイ湾を出航する際に、船内で面白い光景を目にした。このスピードボートでの席と言うのは特に決められていた訳では無かったが、午前中参加者たちは同じ位置に座っていたので、自然とその場所が指定席のような状態となっていた。ところがこの出港時に、日陰となる部分の無い船首に座っていたアメリカ人カップルが、屋根付きの船尾に移って来た瞬間、凄く嫌な空気となった。そのアメリカ人カップルは、他の人たちの荷物を移動させて座り込んだのを、皆に見られていた。しかも割り込みをされ、荷物を動かされてしまったシンガポール人夫婦、そして窮屈な思いをして座る羽目になった奥さんと長男を見て、船尾に近い場所を占めていたイタリア人男女グループ、北欧から来たと思われるカップル、オーストラリア人男女グループ、そして当の本人であるシンガポール人夫婦など、皆が冷たい視線を浴びせている。不思議なもので特に会話をした訳でも無いのに、この船尾の席に座っている人たちに変な連帯感が芽生えたらしい。結局このアメリカ人カップルは、次の目的地のヒン・クラング(Hin Klang)に到着後は、この船尾へはやって来なかったのである。

 スピードボート船尾シートでは、ちょっと嫌な空気が漂う中、10分程航行してヒン・クラングへと到着。この場所は、ピピ・ドーン島の北東に位置するバンブー島(Bamboo Island)沖に位置するシュノーケリングのポイントで、海は透き通っていていて、珊瑚礁が広がっている。
 添乗員が
『シュノーケリングを楽しんでください。』と言うと、一斉に水中メガネとライフジャケットを受け取り、海の中へと入って行く。皆がこの海洋でぷかんと浮くようにして、海の中を見入っている。この日は今までに無い良い天気だったので、簡単に背中が日焼けしてしまう。そんな事を気にする人たちは、このツアーには参加しておらず、肌の弱い白人でも全くノーケアな状態でシュノーケリングを楽しんでいる。
 自分も負けじとビデオカメラにスポーツバッグ(水深3m位までOKなプラスチック製カバー)を装着して、海へと飛び込む。午前中にシュノーケリングをしたロー・サマ湾と違って、外洋に位置する事から海水もそれなりに冷たい。この日は海が穏やかだったので、潮の流れもきつくは無く、本当に海洋にぷかりと浮かびながらシュノーケリングを楽しむ事が出来た。
 ここでも多くの魚たちが自分たちを迎えてくれて、ボート上からクルーがパンの切れ端を投げ込むと一斉に集まってくる。そんな近くにいると、魚は人間の体にも吸い付いてきて、くすぐったいと言うよりは気持ち悪い。ただ本当にシュノーケリングを楽しむとしたら、ここヒン・クラングの方が珊瑚礁などがあって楽しい。
 家族の中で最初に海に入っていたのは自分と奥さん。子供たちには申し訳無いがここでの水遊びはちょっと難しい。午前中も時間一杯までシュノーケリングを楽しんだ自分がボートへと戻り、それと交代で母親がシュノーケリングを始める。船尾でそんな様子を見ていると、糸井重里似の添乗員が
『あなたのお母さんは、泳ぎがとってもうまいですね。』と話しかけてきたので、
『彼女は昔、スイミングコーチをやっていたから』(実話)と答えると、またまた妙に感心をしていた。
 約30分、シュノーケリングを楽しみ、ボートではミネラルウォーターやフルーツが振る舞われた後、移動を開始する。


<カイ・ナイ島>
 このピピ島ツアーで最後に訪れるのは、プーケット島からスピードボートなら20分足らずで来る事が出来るカイ島。ここも諸島となっていて、カイ・ヌイ島(Khai Nui Island)、カイ・ノック島(Khai Nok Island)、そして今から訪れるカイ・ナイ島(Khai Nai Island)から成り立っている。
 約15分程、全速力で海上を航行していたスピードボートが減速し始めた瞬間、首を伸ばして外の様子を見てみれば、本当に小さな白い砂浜が広がる島が目の前に。ボートはエンジンを逆回転させて、船尾側からビーチへとつけて到着。
 自分たちも順番にビーチへと下りるが、トン・サイ湾で上陸した時には、全ての荷物を持って行き大変な思いをしたので、不要な荷物は船内に置いて行く事にした。この時に持って行ったのは、ビーチタオル1枚、子供用浮き輪、水中メガネ、お菓子、ミネラルウォーター、財布など。無人島と言われているカイ・ナイ島だが、ビーチにはパラソルとチェアが一面並べられており、飲み物などを売っている小屋も見えたので、お金を遣う事があるかも知れないと思った。

 添乗員がボートを下りた人たちに
『出発時間は15時半です。』と説明をしている。手元の時計を見ると約1時間半の自由時間で、このツアーの中で最もゆっくり出来そう。そして、ツアー参加者たちは思いのままに小さな島へと散らばって行く。
 自分たちはまずこのビーチに並べられているパラソルの所へ。残念ながらこの時島の上空にだけ、厚い雲が覆っていて本当に少量の雨が降っていた。はこの小さな島には、その雨宿りまたは激しい日射しを避ける日陰となる場所が本当に限られているので、ビーチに並べられているパラソル向かう。暫くするとパラソル管理人がお金の徴収にやってくる。値段を聞くと、パラソルとチェアがセットになっていてB150と言うので、これからの天気がどう変わるかも想像つかないので借りる事に。
 今までずっと良い天気だったのに最後は駄目かなと思ったが、本当に天気は変わりやすい。厚い雲が東側に流れると、すぐに太陽が激しく照りつける。自分は子供たちを連れて、目の前のビーチに行く。ここは砂浜がとても広いので、子供にとっては海水浴と砂遊びの両方を楽しむ事が出来る。
 自分が素潜りで付近を潜ってみるが、魚などは見当たらない。透明度は高い海で、海の底はビーチと同じ珊瑚礁や貝が細かく砕かれて出来ているので真っ白なのだろう。そんな状態なので、裸足でビーチを歩いていたり、海の中に入っても怪我をする事は無い。

 カイ・ナイ島は、大人の足なら一周を歩くに5分も掛からない小島。しかしこの島の素晴らしい所は、スピードボートの停泊している場所が一面ビーチであるのに対して、その反対側と言うと全く違うことだろう。ゴツゴツした岩が所々にあって、魚たちが集まって来る場所となっている。砂浜は殆ど無いが、シュノーケリングや素潜りで魚を見るには最高。
 ビーチ側では、殆どの人たちがチェアに横たわったり、砂浜に横たわって日焼けをしている光景が目立っていたが、こちら側では陸に居る人などはおらず、大人の腰位までの深さの場所で皆がシュノーケリングをしている。実際に自分もこの場所で海に入ってみるが、海の底も多少岩がゴツゴツしているので、場所によっては海の中を歩く時に注意が必要な程度。非常に透明度が高い海に、岩がある事で変化に富んでいる感じ。そして、ここには今までシュノーケリングをしてきた場所のようには魚はわんさか泳いではいないが、逆に餌付けされていない魚たちがごく自然に泳いでいる。人間が近付きすぎれば、逃げ回る魚たちを追うようにしながら、岩場をくぐり抜けてシュノーケリングを楽しむ。ここではそんな光景を見る事が出来た。
 カイ・ナイ島へのツアーは、自分たちの参加した多くの場所を訪れる中に組み込まれているケースもあれば、カイ島2島を1日かけて巡るツアーや半日だけ滞在というツアーもある。とにかく小さな島なので、3時間くらい滞在すれば満足出来ると思う。逆にこの島の場合、施設という物は皆無だし、屋内の様な逃げ場も無いのでそれ以上の滞在はかえって大変かも知れない。


<プーケット港>
 カイ・ナイ島出発時間を迎える。他のツアーのボートもこの島に寄っているので、結構沢山の人たちが島で楽しんでいる。今回自分たちがツアーの参加者たちは実に時間に正確で、出発時間が定刻を遅れた事は一度も無かった。
 16時には出発した場所と同じ、ゲストハウスの前へとボートは着岸。最後に1日ツアー参加者の面倒を見てくれた添乗員から挨拶があった後、ボートから下り始める。船尾のテーブルの上には、さりげなくチップボックスが置かれてあり、自分たちも心ばかりのお礼という訳ではないが入れさせて貰う。

 ゲストハウス前に来ると、送迎用のバンが何台も待機していて、ドライバーが各方面を告げてはツアー参加者たちをバンへと誘導している。自分たちは帰りはどのバンだろうと思っていると、往路に自分たちを乗せて来たドライバーが
『あなたたちはこっちの車ですよ。』と声を掛けてくれた。やっぱり、子連れは目立つのだろうか。まあ迷わずに済んだので良かったけど。
 復路のバンの中では完全に疲れ切っていたので、プーケット港を出たあたりからは、完全に熟睡体勢に。自分たち家族だけで無く、ドライバーを除く乗客の全員がそんな感じだった。今日は運良く好天に恵まれたので、日焼けもして余計に疲れたに違いない。
 往路では一番最後のいピックアップだったクラブ・アンダマンだったが、復路では最初に寄ってくれたのは子供が居る自分たちにとっては助かった。


<クラブ・アンダマン・ビーチ・リゾート>
 ホテルに到着した自分たちは、そのままロータス・ビレッジを素通りしてプールに向かう。プールに設置されているシャワーで体についた海水を流し、更にプールでひと泳ぎして火照った体をクールダウンする。今までは余り気にならなかったが、やはり家族全員がかなり日焼けをしているようだ。
 パトン付近はちょっと曇りがちの天気で、17時を過ぎていたのでプールは全く誰も泳いでおらず、子供たちは帰りのバンの中で寝た事でパワーも復活した様子で大はしゃぎ。雨が降ろうが、夕方だろうが、肌寒かろうが毎日欠かさずプールに泳ぎに来ている自分たち家族を見て、ホテルスタッフたちはどう思っていただろう?

クラブ・アンダマンで用意されていたデザートの写真はこちら

 プールで30分程遊んで、部屋へと戻る。大人はここからが大変。子供たちをお風呂に入れなければならない。ここロータス・ビレッジのお風呂は欧米スタイルのバスタブなので、深さが余り無い。またシャワーは固定式となっているので、子供の体を洗ったりするには少々不便。
 また風呂に入れるのと同時に、今日1日で使用した水着などは塩水がついているので洗わなければならない。旅行前に入手していた情報では、ここクラブ・アンダマンにはランドリールームがあるとの事だったが、実際にこちらに来てホテルにはランドリーは一般的なルームサービスしか無い事が判った。なので、日本から持参した洗濯洗剤を使用して、洗面所で手洗いするしかない。またバスルームには洗濯を干すワイヤーなどは用意されていない。ちなみにクラブ・アンダマンのプール側出口をタウィーウォン・ロードに出た場所には洗濯屋がある。ちょっと見つけにくいが、注意して歩いていると料金などが記載された小さな白い看板を見つける事が出来るだろう。

 今日のピピ島ツアーの後片づけをしているうちに、すっかり太陽は沈んで辺りは暗くなっていた。この日の夕食は、ホテル内レストランで済ませる事で予め決まっていた。この夕食はロータス・ビレッジ宿泊のプランにセットされており、2部屋を使って宿泊している自分たちの場合は、料理は大人4人分は用意される事になる。
 部屋を出れば、すぐ目の前にレストランがあるのがこれ程嬉しいと思った事は無い。やっぱり今日1日のボートでのビーチ巡りで、すっかり疲れてしまっているから。食事に向かったのは、ホテルの庭が見渡せるアンダマン・レストラン(Andaman Restaurant)で、毎朝朝食のバッフェを食べている場所。
 レストランに足を踏み入れると、すぐに男性スタッフが自分たちの元にやって来たので、ミールクーポンを手渡すと席へと案内される。時刻は18時半過ぎで、夕食の時間としては混雑してもおかしくない時間帯の筈なのに全くお客が居ない。曜日毎にテーマ別ディナーなどもメニューとして取り入れられているようだが、閑散期のこの時期には特にそのようなイベント的なメニューも無かった。
 自分たち以外はお客が居ないのだから、自然とスタッフたちはこのテーブルへと集まってくる。最初に飲み物を聞かれ、大人はアルコール類、子供は水をオーダーするのだが、レスポンスはとにかく早い。多くのスタッフにテーブルを囲まれている事にはちょっと違和感は覚えたものの、一所懸命子供に構ってくれたりしているのは、食事に勤しみたい大人としては非常に助かる。そんな子供たちに構ってくれているスタッフの中で、チーフと思われる男性スタッフの対応は、本当に”温かさ”を感じた。まだ会話もままならない長男をスタッフたちは、とても可愛がってくれたのだが、このチーフは若いスタッフたちに
『食べさせるから、小皿を持ってきてくれ。』とか、スプーンを落としそうになる長男を見て、他のスタッフがフォローしようとすると
『いいんだよ。自身で食べさせれば。』と言って、長男の後ろをガッチリガードしている。と言いながら、結局このチーフが、長男にご飯を食べさせていたのには、大人たち笑えた。
 正直言ってしまうと食事自体はそれ程たいした物では無かった。ただその食材の調理と味付けは、流石ホテルのレストランと感じた。そして、閑散期で忙しくなかったからかも知れないが、フロアスタッフが総出で子供の世話をしてくれた事、チーフが長男をめちゃくちゃ可愛がってくれた事がとても嬉しかった。

クラブ・アンダマンでの夕食の写真はこちら


 ホテルのレストランとは思えない何とも不思議な食事時間を過ごした後に部屋と戻ったが、流石にこの日は全員が疲れ切っていて早々とベッドへと入ってしまった。そうして、ピピ島ツアーへ出掛けた1日は終わる。



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